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育児でストレスを抱えてしまっている人のために
こんにちは。榎木夫(えのきお)です。私は今、育休を取って夫婦二人で育児に専念しているのですが、育児は本当に大変です。この大変さは育休前に会社で働いていた私には全く想像がついていませんでしたし、周りの職場のメンバーも長期で育休を取ると行った時の反応は、「そうゆう時代だね」といった感じで、承諾はするものの必要性は理解していない様子でした。(このことはこちらに詳しく書いています⇒夫婦ともに育休を取ると暇なのか)
一方で育児は非常に大変で、育児によるストレスで育児ノイローゼとなってしまう人もいるほどです。育休に対する社会的な理解を深めたい、育児でストレスを抱えてしまっている人のストレスを少しでも減らしたいと思い、理系出身らしく別の視点から育児の大変さを説明し、解決策まで考えます。
電気ショックを与えられた犬の実験
育児の大変さを説明するために、ここでアメリカ人心理学者でうつ病と異常心理学に関する世界的権威であるマーティン・セリングマンの実験を橘玲著「幸福の資本論」より紹介します。(現代からすると残酷な実験ですので読まれる方はお気を付けて)
この実験に登場するのは2頭のイヌです。どちらも動けないように布で拘束されていますが、一方のイヌの横には板があって、首を横に振ってそれを叩くと板の裏にあるボタンが押されて電流が止まるようになっています。もう一方にはこうした仕掛けはなく、自分で電流を止めることができません。
橘玲著「幸福の資本論」、電気ショックを与えられたイヌの章(p129)より引用
そのうえでセリングマンは、2頭に電気ショックを与えてみました。どちらのイヌも苦痛から逃れようと激しく暴れますが、拘束されているので動くことができません。しかしそのうちに、頭の横に板のあるイヌは、なにかの拍子に頭でその板を叩くと電気ショックが止まることに気がつきます。イヌはそのことを学習し、電気ショックのたびに頭を振って電気を止めるようになります。しかしもう一方のイヌは、なにをしても苦痛から逃れることができません。そして最後には、どれだけ電気ショックを加えても、ただ目を閉じて座っているだけになってしまったのです……。
実験結果を育児に当てはめて考えてみる
前章で紹介した実験結果より、苦痛を回避する選択肢を与えられたイヌはストレスレベルがそれほど上がらなかったのに対し、選択肢を奪われたイヌは、ストレスが上限を超えてしまい、何の反応もできなくなってしまったことが分かっており、これは人間にも当てはめて考えることができます。
育児は一度始まればずっと続きます。週末の休日も、年末年始もお盆も無く続きます。また、定時という概念も無く昼夜に関わらず続くため、24時間365日休みなく続ける必要があります。育児というストレスをずっと与えられ続けたうえで「休み」が無い状態は、先ほどのイヌの「電気ショックを逃れるためのボタン」が無い状態と同じではないでしょうか。つまり、2匹のイヌのうち「選択肢を奪われたイヌ」の方となってしまっており、実験でイヌがストレスの上限を超え、何の反応もできなくなってしまったように、人間も心を病んでしまい、育児ノイローゼとなってしまうと考えられます。もちろん育児には楽しさ、幸せを感じますが余裕がない状態では、それを感じるよりもつらい思いの方が上回ってしまうと思います。
育児の大変さはこのように説明することも出来るのではないでしょうか。次章ではこの辛い状況の解決策を考えます。
原因が分かれば解決法はある
先ほど紹介した2匹のイヌの実験をもう一度考えます。ストレスレベルがそれほど上がらなかった犬もストレスが限界値を超えてしまったイヌも、両方とも電気ショックという苦痛を与えらえており、違いは、ボタンというストレスから逃れる手段があったかどうかになります。つまり、苦痛事態を取り除かなくても、それを逃れる手段があると考えるだけでもストレスの上昇を抑えることができます。
育児に置き換えると、育児は24時間365日休みなく続き、もし嫌になってしまったとしても、自分が逃げたら子が衰弱してしまうため、逃れられないように感じてしまいます。この、逃れられないと思ってしまうことが、ストレス上昇させてしまうのです。このため、もし育児が嫌になってきてしまった場合、「最悪、保育所に預ければよいか」「本当に無理になったら実家に帰って子供を見てもらおう」など自分の中での逃げ道を確保しておくことが解決策になります。本当にそうやらなくても、そう思っておくことが大事なのです。
育児は長期戦です。陸上競技で例えるならば短距離ではなくマラソンになります。あまり初めから気を張らず、少し気楽に考えて進むくらいがちょうど良いです。これを読むことで育児をする人のストレスを少しでも減らすことができればと思います。
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